不動産のチラシによく書いてある、「月々〇〇円家賃並みのローン支払いで購入できます。」と言うセリフ。
「そのくらいの金額で買えるなら、家賃を払っているより自分のものになるし良さそう」と気持ちが動かされる。
ちょっと見るだけ、行ってみようかと思う。
不動産屋さんは住宅販売のプロである。
チラシを見て何となく内見に行っている我々は素人だ。
しかもチラシの売り文句に「いいかも」と思っていることもバレている。
それをプロが逃すわけはない。
「家賃を払っていても自分のものにはならないから、もったいないですよ」
「お客さまなら銀行の融資は十分受けられますよ」
というキラーワードに気持ちはぐらつく。
「今払っている家賃より少ないし、買っちゃおうか」
となる。
マンションを買う人の9割が衝動買いだ、という説もある。
ちゃんと精査せず『たぶん大丈夫そう』だから、契約してしまっている。
そもそも『家賃並みの支払い』の根拠は何だろう?
月〇〇円のローン返済額は、『借入額』『金利』『借入期間』から割り出したものだ。
『金利』長年の低金利政策で日本の金利水準は低い。
『借入期間』最も長い借入期間で計算したものが多い。
『借入期間』を短く設定すれば、当然月々の返済額は多くなる。
これは分かりやすい。
問題は『金利』だ。
日本は7割の人が変動金利で住宅ローンを組んでいる。(米国は9割が固定金利)
変動金利は半年ごとに金利を見直し、5年ごとに返済額を見直すものが多い。
つまり月々の支払額は5年ごとに変わる。
返済額は前回までの返済額の1.25倍までという上限がある。
急に月々の支払額が上がってしまうのを防ぐ効果がある。
しかし金利は上限なし。
5年経てば、1%が5%になっていても不思議ではない。(米国 2022年0.25%→2023年5.25%、1年で5%UP)
返済方法は『元利均等返済』の利用者が圧倒的に多い。
元利均等返済の返済額は毎月同じ。
家計の計画は立てやすい。
家賃のような感覚で、毎月同じ額の引き落としがある。
払う方の感覚では、毎月着実にローンの元本返済をしている気分になる。
実際は元利、つまり元本と金利を合わせた金額を毎月払っている。
その支払いは、まず金利から。(借金がいくら減るかは決まっていない)
例えば月7万円の返済で、その月の金利が3万円だと、元本から4万円が減るという具合。
もし金利が半年ごとにどんどん上がっていった場合。
月々の返済額の全てが利息の支払いのみになってしまうこともある。
つまり、毎月ローンの返済をしていても借金は1円も減らない状態だ。
その上、利息金額が月々の返済額以上になってしまった場合は、オーバーした分は『未払利息』として、別途支払いをしなければならない。
これはリボ払いと同じ仕組みだ。
<例> 恐怖の未払利息シュミレーション
当初 変動金利 1% 35年
仮に返済額 月80,000円 だったとする。
5年経過時 金利5%に上昇
借入金残高3000万円 だと仮定。
返済期間残30年
6年目〜
月々の返済額 80,000 x 1.25 = 100,000 になる。
月々の金利額 3000万円 x 5% ÷ 12 = 125,000 となり、金利の方が多くなる。
差額 125,000 − 100,000 = 25,000
『未払利息』となる。別途支払い義務がある。
月々の返済額100,000円は、全て金利で借金は減らない。
変動金利の「未払利息」リスク図解
5年ルール・125%ルールが招く「借金が減らない」メカニズム
通常時 vs 金利急騰時の返済内訳
【通常】金利が低いとき
(多い)
支払額の多くが「元本の減額」に回る
【急騰】シミュレーション例
(すべて利息に消える)
(別で支払い義務)
元本が1円も減らない状態
数字で見る「逆転現象」
本来払うべき利息
12.5 万円
3,000万円 × 5% ÷ 12ヶ月
実際の返済額 (125%上限)
10.0 万円
8万円 × 1.25倍
毎月積み上がる「ツケ」
2.5 万円 の未払利息
なぜこの状況が起きるのか?
125%ルール
家計を守る防波堤
急激な支払額アップを抑え、生活破綻を防ぐ仕組み。
金利上限なし
銀行はきっちり計算
支払額は抑えても、利息は市場に合わせてきっちり発生。
未払利息
溢れた分が「ツケ」に
支払額を越えた利息は、将来へ先送りされる負債となる。
- 免除はされない: 支払いを「待ってもらっている」だけの状態です。
- 最後に一括清算: ローン完済時や家を売却する際に支払いが必要です。
- 借金が減らない: 毎月払っても元本は3,000万円のまま、という事態に。
金利は半年ごとに見直しがあるので、当然5年経過前にも未払利息は発生する。
「家賃を払うより、住宅ローンの方が自分のものになるし」と思って買ったのに、実際は毎月高い金利だけを支払って、いつまで経っても自分のものにはならないなんてことも起こりうる。
誰も未来のことは分からない。
5年後の金利は予測できない。
チラシに書いてある〇〇円という返済額は、たった今現在の『利息+元本』であって、将来に渡って同じとはどこにも書いていない。
「今の家賃より安い」というのは、「たった今だけ」のことで、一度35年ローンを組んでしまえば、金利地獄から逃れられない。
もちろん、これから金利が下がっていく局面では変動金利は有利であるが、今後の日本金利は上がっていくことが想定される。
金利が上がったら借換えれば良い?
変動金利は固定金利より低く設定されている。
安い方がいいと考えるのは当然、でも金利が上がったらどうしようと不安がよぎる。
その時に不動産屋さんの一言、「金利が上がってきたら、固定金利に借り換えればいいんですよ」と言われて、安心する。
変動金利が上がるということは、当然固定金利も上がる。
「上がってきたら」っていつ?
そんなの誰にも分からない。
「金利が上がってきたら借り換え」って、かなり難易度が高い。
しかも私たちは日々の仕事や暮らしで忙しい。
住宅ローン金利のことばかり考えて生きている訳ではない。
今は世界経済が激動の時代だ。
これからどうなるか、専門家たちの意見も割れている。
今、日銀はなんとか金利を上げようとしている。
住宅ローン金利もじりじりと上がってきている。
変動金利は今のところまだ低いがインフレが進む不確実な世の中で、借金の総額が分からない不確実な変動金利は大きなリスクだ。
変動金利で借りている人は、未払利息のない固定金利に借り換えるべき時ではないか。

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