”日本の失われた30年”の後の、今の世界の状況。
円安が加速し、物価が急騰している。
これから日本はどうなってしまうんだろう。
小さい子供を持つ親御さんは、特に不安の大きい時代だと思う。
日本経済は時代ごとに、明らかに変わってきている。
時代ごとの家計感覚の違い
① 1970年代〜高度経済成長期
私の両親が子育てしていた頃だ。
その頃日本には『土地神話』というものがあった。
「土地の価格は絶対に上がり続け、下がることはない」というものだ。
政府はGDP押し上げのため、住宅ローンを組んでマイホームを建てることを推奨した。
そして国民はこぞって『夢のマイホーム』を建てた。
私の父もその一人。
父の会社経営が思わしくなくなった時、自宅を売って会社の資金を捻出した。
土地の価格が上がり続けていたため、買った時よりも高く売れて、手元に現金が残ったのだ。
この時点での家計戦略としては、「住宅購入=堅実な投資」であったと言える。
②1990年代〜バブル崩壊後
ところがバブル崩壊で状況は一変する。
高騰していた地価は大暴落し、その後30年間ほぼ横ばいで推移した。
横ばいということは、実質『下落』である。
マイホームを買うときは、”土地プラス建物”の金額を支払う。
日本では建物の価値は約20年でゼロになる。
つまり地価が上がらなければ、フルローンで買ったマイホームを売ると、ローンの残債が残ってしまうということだ。
しかも不動産取引には、高額な売買手数料がかかる。
昔のように「いざというときは自宅を売却して何とかする」という手段が通用しない。
ところが「結婚したら家を買うものだ」という感覚は強く残っていた。
実際、私の周りでもは結婚してすぐにマイホームを購入した人が多かった。
それは結果的に、今の時代には合っていなかったと思う。
住宅ローンの支払いと、高額な教育費の支払いのピークが重なり、予定より給料が上がらず、老後資金の不安を抱えている人が多いからだ。
①の時代は教育費の負担は少なかった。
しかもコロナ禍で住宅ローンの返済ができなくなった人が急増した。
住宅ローンも借金、返済が滞ればブラックリスト入りしてしまい、その後の人生に大きなマイナスとなる。
これからの時代の家計戦略
ここから30年は、ますます読めない。
私は、『家庭の経済的危機は、災害のようなもの』だと思う。
人生は何がいつ起こるかわからない。
そのため防災的観点から、『教育費と住宅費の支払いのピーク重ねない』ことをお勧めする。
1970年代と違い、いざという時に住宅ローンがあると、身動きが取れなくなる可能性がある。
安心な住宅購入のために
「賃貸は掛け捨てだけど、買ったら自分の資産になる」と言う人がいるが、住宅ローンは支払いが終わるまでは”資産”ではなく”負債”。
万が一の事態の時、ローンがあることで打つ手がなくなる危険性がある。
そして将来のことは誰にもわからない。
今の時代、”結婚したらローンを組んでマイホーム”というのは、とりあえずやめた方がいいと思う。
理由は教育費と住宅ローンのダブル負担が予定よりキツくなるからだ。
”住宅ローン控除”という税制優遇措置がある。
年末のローン残高の 0.7%(上限あり)を、所得税額から控除してもらえる。期間は13年間。税金が安くなる。
子供が産まれた時に家を買うと、子供13歳の時に優遇措置が終わって税金が上がってしまう。
そして住宅は10年を超えた頃から、不具合が生じやすくなる。
修繕費用がかかり始める。
ちょうど子供の”教育費のピーク”に、”税金が増えて修繕費用がかかる時期”が丸かぶりしてしまうからだ。
『教育費+修繕費+税負担+住宅ローン』が家計を圧迫する。
負担が大きい。
実体験から
子供が就職をして家を出ると、驚くほど生活が楽になる。
食費や学費以外にも、いろいろ親としての責任があるからだろう。
住宅はそれからゆっくり考えてもいいのではないかと思う。
実は我が家は子供が大学生になってから、住宅ローンを組んで家を建てた。
若い頃はバブル崩壊の借金があって、買いたくても買えなかった。
その頃は本当に残念な気持ちだったが、後になってみるといろいろな面で良かったと思っている。
娘の教育費のピーク時は、節約生活をして、せっせと将来の大学の学費のため貯金をした。
ありがたいことに国立大学に合格できたので、その貯金を頭金にして家を買うことができた。
もし私立大学だったら、家に関しては違う選択をしていた。
そして教育費地獄が続くことになる。。。
ここで重い住宅ローンがあると、子供の将来の選択肢をせばめてしまうこともあっただろう。
今FPとして考えてみると、大きな支出のピークが同時に来なかった事が、結果的に我が家の家計を守ることにつながったと思う。
一つ終わったら、その時点での家計の状態を見て、次のことを決めるという流れ。
ちなみに50代でも住宅ローンは組める。
年収や役職によっては、若い頃よりも審査に通りやすいこともある。
人生100年時代。焦る必要はないと思う。
それまでマイホームの夢を夫婦で語り尽くして、コツコツ頭金を貯めておく。
そして最新技術の詰まった住み心地の良い終の住処を、ゆっくり手に入れるという考え方も十分現実的だ。
住まい選びは生き方選び
家計の三大支出———住宅費・教育費・老後資金
このようにすれば、家計の三大支出のうち2つ(住宅費・教育費)を、同時期に支払うことにならずに済む。
もう一つの三大支出である老後資金は、20代からidecoや積立NISAで投資信託を積立でコツコツ購入し、複利の効果を利用して”資産をじっくり育てる”ことが大切だ。
若い人たちの家計には、時間という強い味方がついている。
計画的に進めていけば、家計を安全運転することはできる。
もちろん経済的に充分な余裕があるのなら、マイホームを早めに買ってもいい。
ただ、「友達が買ったから」とか、「営業マンに勧められたから」とか、絶対にそういう理由で安易に買わないで欲しい。
人生100年時代、住まい選びは「これからどうやって生きていくか」を夫婦で考える大切なテーマだ。
ぜひよく話し合って、心から納得出来るように選択して欲しいと思う。